雰囲気特化型スペシャリティーコンパクト
兼ねたから興味のあったFIAT500(チンクエチェント)……イタリアが誇る名車中の名車です。車という乗り物は実際に乗って自分で感触を確かめない限り確かな情報は発信できません。私が車のレビューを書く際は、出来る限り実際に試乗をしたデータを元に構築しています。
現状乗れない車……例えばトヨタ2000GTや初代スカイラインGT-Rなどについては感想を述べることができないので、その車の歴史やメカニズムを中心に紹介するようにしています。
今回はイタリアが誇る名車、FIAT500の走行レビューを記載していきます。
それではさっそくスタートしましょう。オシャレなリモートキーをハンドル横に突き刺してひねると、ブォォォォォーーンと低い音とともにエンジンがかかります。
今回は目黒区の中心を港区方面に進んでいきます。ブレーキから足を離すと、AT特有の現象であるクリープが発生しません。クリープ現象がない車はMT車というイメージが強いかもしれませんが、ATの一種であるCVTと、トルコンを使わない自動変速MT(VWのDSGやBMWのDCTなど)もクリープ現象が発生しません。
しかし前者のCVTの場合は意図的にクリープ現象のような機構を取り込んでいるので、ふつうに運転する人にとってはATと何ら違いがないように出来ています。
後者のDSGやDCTは、自動変速と聞くとATに聞こえるかもしれませんが、こちらはあくまでMTをベースに自動変速を行っているだけなのでATではありません。しかしMTの特徴であるクラッチが自動化していて足元にないため、AT限定免許の人でも運転が出来るようになっています。(ちなみにAT車でシフトをスポーツモードに変えてもMTにはなりません。MT風になるだけです。)
FIAT500は後者のDSGの可能性が高いですね。(あとで調べたところ、FIAT500はデュアロジックATを採用しているそうな。ようするにDSGのようなものです。)
見た目の可愛さは芸術レベルですが、果たして走りはどうなのでしょうか。
好き嫌いの分かれる走行性能
これまでメルセデスやBMWに代表されるドイツ車には乗ってきた経験があるのですが、イタリア車は初めてだったので興味津々でした。
しかし走り始めた瞬間に走る違和感は非常に強烈的でしたね。ATと思い込んで踏んだアクセルは、グワァァァァァァーーーンという音を立てながらゆっくりと加速していきます。
とにかく走らないんですよ。頭の中ではすでに60キロくらいなのに半分以下の20キくらいにしか加速していません。一言で言えば遅いんです。下手をすれば660ccターボを搭載した軽自動車にも初期加速で負ける恐れがあります。
この瞬間、この車のミッションはMTベースの自動変速機構であると確信しました。この車は完全なるATではないので、途中でギアを変更する必要があります。しかしこの車はクラッチが足元になく、機会が自動的に行うので任意でクラッチ量を調整できません。
車がギアを上げて良いのか、それとも現状維持で走るかを考えているあいだがスポッと抜けたようなゾーンになってしまい加速しないのです。
日頃から日本車のスムーズな加速に慣れている人にとっては非常にストレスです。なんか15年ほど前にレンタカーとして借りた古い基準の軽自動車(NA)を彷彿とさせるようなイメージです。
使いこなせばダイレクト感が凄いので、車と一体化して非常にスムーズに走れると思います。ただ個人的な意見だと私はそんなの求めていません。小排気量でエンジンを高速回転させて楽しむくらいなら、大排気量エンジンの太い低速トルクでゆったりと走りたいのです。
体感的な加速性能は「トヨタパッソ>FIAT500」的な感じです。アバルトならもっと元気があるのかもしれませんが、雰囲気どうこう以前に初期加速が遅いのは嫌ですねぇ~。
車好きな人から見れば個性がなくなるかもしれませんが、この車に6ATかCVTを搭載した方が実用的にはなりますね。この類のファッションカーに実用性を求めることはそもそもナンセンスですが、車が移動の道具か部屋に飾るガジェット程度にしか認識していない層にはあまり受けないかもしれません。販売体制もデュアロジック車と6AT車の設定があれば、もっと幅広い層に受け入れられたかもしれません。
逆に車に一体感や走っていること自体に楽しさを求める人には良いのではないでしょうか。
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