タマオクロニクル(1)創世

-国立研究所所長回想録-


地球の歴史をふりかえれば誕生と崩壊の繰り返しだ。

  • 原生代の火山活動による大量絶滅
  • デボン紀の海中無酸素状態による大量絶滅
  • ペルム紀の地上酸素濃度低下による大量絶滅
  • 白亜紀の巨大隕石衝突による大量絶滅

これら以外にも様々な要因により地球規模での大量絶滅が繰り返されてきた。そして今生きているこの世界ももうすぐ終わる。

産業革命以降急激に文明を発達させてきた人類は月への移住も可能となった。

しかしどんなに技術を積み重ねてもレッドリスト(絶滅危惧種)に指定されている生物の保護を叶うまでには至らない。

人類による生活圏の拡大は、同時に人類が住むことのできない地質的変化をもたらし、1年、また1年とレッドリストの生命はこの星から姿を消した。

私たちの住んでいる世界もいつかは崩壊する。崩壊前の世界を私たちが知らないように……。

「歴史は繰り返す」……この言葉を地球上で初めて発案した人類は、皮肉にも地球上で初めて大量絶滅に対する恐怖を理解することになった生物でもある。

地球人口が1億人にまで減った現在、人類が最後のレッドリストに認定された。月のアルコロジーでは技術的問題が発生し、全人類が移住する計画もはるか昔に破綻している。

生命とは誕生したと同時に崩壊への道を辿るものだ。この世界に絶対は存在しないが、仮に絶対があるとするなら宇宙を含めて全ての物質には終わりが訪れることだろう。

しかし科学者としての私には地球の為に何かをすることができない。どのみち滅ぶのならせめて私の愛猫だけでも幸せに命を真っ当できないものだろうか。

過去に実現した分子結合型時空転移装置を使えば物質を別次元に送り出すことができるかもしれない。

これは高度に発達した物流システムの完成形とも言えるものだったのだが、滅亡寸前のこの世界では不要の産物となり至るところに廃棄されている。

しかしながら猫は生命体だ。装置の仕組みは分子を一度分解してから空間上で再構築させる原理であるため猫の体では耐えられない。

そこで私は備蓄してあった合成マシュマロを倉庫から取り出した。この物質をベースに私の愛する猫を融合させれば時空転移装置を通過できるのではないか?

私は考える間もなく愛猫のチャミィと合成マシュマロを融合させる実験を試みた。失敗することなど恐れている暇はない。滅亡の瞬間はすぐそこにまで迫っている。

チャミイよ、私はお前が生きられるのなら潔く滅びを受け入れよう。

そして私の希望となり記憶の中でたまに私を想像してほしい。お前の思い出の中でなら、私はずっと生き続けることができる。

世界は創世と滅亡の繰り返しなのだから。


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